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小児外科とは

小児外科コラム01

小児外科とは
おしりとおちんちんの受難からみえてくるもの

小児外科の歴史

欧米では19世紀の初頭から小児病院が各地に設立されました。ヨーロッパ最古とされる小児病院は1802年に設立されたHospital Enfant Malades(パリ)です。1840年代になってからドイツ、デンマーク、スウェーデン、英国に相次いで小児病院が建設されました。小児外科の発展はもうすこし後の1900年代になってからで、英国の Dennis Browne および米国のWilliam Laddの二人が現代小児外科のパイオニアといわれています。前者は手術器械の名称、後者は靭帯の名称に名が刻まれています。

日本において小児外科が芽生え、注目を浴びたのは戦後の混乱期をようやくにして脱した1950年代のことです。駿河敬次郎先生(順天堂大学:当時賛育会病院)が1952年に先天性小腸閉鎖症の手術に最初の成功を収めてからでした。それ以来、小児外科の存在が少しずつ世間に認識されるようになりました。日本におけるパイオニアの幕開けでした。日本における小児病院は1958年に東京都立清瀬小児病院が、1965年に国立小児病院が設立されました。小児外科医養成機関としては1967年に順天堂大学医学部小児外科学講座が開設され、初代教授に駿河敬次郎先生が就任なされました。以後、全国の都道府県に次々と小児外科が誕生していきました。日本小児外科学会が発足したのは1964年で、アジアでは初めての小児外科学会でした。それから約50年、多くの先人たちの命を削る努力によって現在の小児外科が築かれてきました。それまでは日本と欧米と比較し小児外科のレベルが20年の開きがあるとされておりましたが、現在では小児外科の代表的な英文学術雑誌である Journal of Pediatric SurgeryのEditorial Boardに日本人が数多く登用されたことや、アジアのみならず世界各国からの留学生を迎えるなど、世界の小児外科学会の先者的な存在となっています。

2013年には日本小児外科学会が産声をあげた新宿にて第50回日本小児外科学会学術集会が開催されました。テーマは小児外科医療の継承・新たなる50年へのアプローチです。2021年は第58回目の学術集会が開催されます。未来に向けての新たな取り組みは始まっているのです。

新たなる50年へ

小児外科とは

小児外科とは、通常15歳以下の小児患者に対して主に手術という手段を用いて治療を行う分野です。扱う領域は小児腹部外科や呼吸器外科、泌尿器科など、脳・心臓・骨・筋を除く全ての臓器を扱っています。その多くの疾患は「神様が忙しすぎてやり残してしまったもの」といわれるほど、成人外科ではみられない、また非常に稀なものです。「神様の宿題」をいかにやり遂げるかが小児外科医の真髄です。

小児は大人のミニチュアではありません。単純に体が小さいというのみならず、年齢により大きく変化する体の機能を十分に理解した上で診断・治療を行わねばなりません。

小児外科の一般的な印象として、細かく繊細で、非常に手間がかかり面倒な分野と感じられる方も多いとおもわれます。しかし、病気や怪我で苦しんでいた子が治っていくダイナミックな過程に寄り添い、再びその笑顔を見られるようになったとき、病気に負けずたくましく成長していくこどもを見ることができたときの喜びは他では得られない最高のやりがいです。これが小児外科の最大の特徴といえるかもしれません。

地域の小児外科の役割

ここまで立派なことを書いてきましたが、最後に焦点を身近なものに移して話を進めます。地域の総合病院の小児外科についてです。小児外科で行う手術の50%を占めるのは鼠径ヘルニア(脱腸)などの関連疾患です。多くの大学病院でも同様な割合です。そのほかに急性虫垂炎などです。これら疾患は数の多さからみても小児外科医によって地域の総合病院で完結できることが望ましいとおもいます。当院の扱う手術症例もほとんどが鼠径ヘルニア関連疾患や急性虫垂炎です。その他、手術に至らなくとも小児外科で扱う身近な病気としては便秘や包茎などがあります。便秘も立派な病気です。なかなか治らない便秘の中にも大学病院などで手術が必要な病気が隠れているのかもしれません。手術が必要なくとも、コントロールされないまま放置されると便秘が悪化し社会生活に影響を及ぼすこともあります。一方で、おちんちんの皮は立派な役割を果たす臓器です。無駄なものではありません。家庭内でむやみにむかれたおちんちん、感染して赤くなったおちんちんにオロオロするママたち。前身の朝霞台中央総合病院に小児外科ができた2012年以来、おしりとおちんちんの受難をたくさんみさせていただきました。身近な小児外科。時には大学病院への窓口となるような小児外科。また院内にだけとどまるのではなく、地域社会に積極的に情報発信ができる小児外科。そのような小児外科をここで目指したいと思います。

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